重度訪問介護での出発
国立駅で香月さんと出会い、それから約15年の歳月を経て、私は法人「プラスハート」を立ち上げることになりました。
基準該当という制度のもと、副業的に個人介護を約15年続けてきましたが、介護の知識も経験も乏しいまま、2015年9月18日に法人としての一歩を踏み出しました。

程なくしてCIL昭島さんの紹介で、第一号の利用者さんとなったのが小俣昭夫さんです。顔合わせから契約まで順調に進み、迎えた訪問介助初日。私は“重度訪問介護の洗礼”を受けることになりました。

小俣さんは糖尿病の進行により片足を膝下から切断されていましたが、そのハンデを感じさせないほど強面でアグレッシブな方でした。元日本料理の職人であり、私にとってはまさに厳しい師匠。やることなすこと全てを否定され、これまでの個人介護の経験はまったく役に立ちませんでした。
毎日の小俣さんからの厳しい指導を受けるうちに、私は重度障害を持つ方に対し、自分が「手伝ってあげる」という上からの目線で介護をしていたことに、ようやく気づかされたのです。

心身ともに疲弊した3か月後の日曜日、初めて小俣さんから「ありがとう」と言葉をいただいた瞬間の嬉しさは、今も忘れられません。その時、師匠と弟子ではなく、ヘルパーと利用者としての関係に変わったことを実感しました。

その日は外出先のさまざまな場面で私を頼ってくださり、私もまた、小俣さんのやりたいことを阿吽の呼吸で支えることができました。「これが本来のヘルパーの役目なのだ」と気づかせてもらった一日でした。昼食は行きつけの町中華に連れて行っていただき、店を出た際にこう言われました。
「プラスハートの事務所に遊びに行きたいけど2階だから無理か。俺の介助が出来ればどこでも通じるよ!これからは利用者をたくさん見つけて、一階に移せるように頑張ってな」

その言葉は小俣さんの遺言となり、私の目標になりました。
そして、楽しく支援を終えた2019年9月15日の翌朝未明、小俣さんはご自宅で突然の心疾患により旅立たれました。

写真のタオルは、小俣さんと一緒に訪れるはずだった矢沢永吉さんのポップアップストアで購入予定だったものです。今は一階に移転した事務所で、私たちを静かに見守ってくれています。

今の私たちの礎を築いてくださった小俣昭夫さんに、心から感謝を捧げます。
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